読書感想文の書き方【感想文に苦しみ続けた男が語る】

読書感想文が害悪であるという話は再三したが、そうはいっても宿題は課される。実際問題、今も読書感想文に苦しむ小学生が数多くいることだろうから、ここは一つ実際に苦しんだ経験のある私が読書感想文の書き方というものを解説してみようと思う。
願わくば、「読書感想文 書き方」でググって辿り着いた小学生の助けとなることを祈って。



さて、これから、読書感想文を書くのがどーも苦手な小学生のきみのために、10個のコツをあげようと思う。


はじめの準備

まず、作文を書くルールを知っておこう。
この記事ではめんどうで守ってないけど、段落の頭は空白を入れるとか、行の頭にマルやテンを書かないとか、そういうアレだ。
きっときみの持ってる国語の教科書や資料集にルールが書いてあるだろうから、それをよく読むか、つくえの上に広げておくこと。

それ以上に気をつけて欲しいのは、まちがいをおそれないことだ。
読書感想文を書く上で大切なのは筆が乗ることだ。言いかえると、いきおいにまかせてガーッと書き上げてしまうのが一番いい。ルールをわすれていないだろうか? 漢字をまちがえていないだろうか? と不安になって鉛筆を動かす手が止まってしまうのは、とても危ない。そのまま書きたかったことをわすれてしまうこともあるからだ。
だから、いっそ原稿用紙は何十枚もムダにするつもりで、まちがってもいいから、漢字をわすれたらとりあえずカタカナでもいいから、とにかく書き上げてみよう。
そのあと新しい原稿用紙で清書すればいいし、不安なら書いた後で親や先生に見てもらえばきっと直してもらえる。(今の小学校には夏休みの間の登校日はあるのかな?)

それと、もしきみが「読書感想文の書き方」みたいな本を持っているとしたら、今すぐそれを捨てるか、つくえの中にしまいこんでしまおう。
私の経験上、あの手の本が役に立ったことはまるでない。ああいう本はたいてい、子どものころ読書感想文を書くのが得意だった人が大人になって書くものだから、きみのように読書感想文の書き方がわからない! という子どもの気持ちなんてぜーんぜん分かってないのだ。

誰に読まれるか想像する

読書感想文を書くとき、「どう書いたら先生にほめられるだろう」とか、「こんなことを書いたら先生におこられるかも」とか、そんな心配をすることがあるかもしれない。
はっきり言って、感想文を書くのに先生の顔色をうかがう必要は一切ない!
きみの感想はきみが感じたことだ。先生が何を言おうが、きみが最初に本を読んで何かを感じたという事実をねじまげることはできない。
だから、先生がいい顔をしなさそうな感想を、堂々と書こう。意外とそういうのがウケたりするぞ。

そのかわり、きみは自分の感想文が誰に読まれるかを想像しなければならない
もしかしたら、国語の授業中にクラスメートと回しあって読みあうかもしれないし、上手く書ければ文集にのって全校生徒がきみの感想文を読むかもしれない。すばらしい感想文ならば、新聞にのって全国の子どもから大人にまで読まれるかもしれない。つまり、不特定多数(だれだか分からないけど、とにかくたくさん)の人がきみの感想文を読む可能性があるんだ。
感想文は日記じゃない。自分だけ分かるような略した書き方や、友達のあいだではやっているような言い回しは、もしかしたら遠いだれかにはまったく意味が分からないってことがあるかもしれない。
文章を書くとき、つねに誰かがこの感想文を読むんだ、ということを想像しよう。
(ちなみに、私は小学校高学年に読まれることを想定してこの記事を書いている。)

あらすじは書かない

よく、読書感想文の文字数をかせぐテクニックとして、本のあらすじを書くという方法を使う人がいる。でも、きみがそうする必要はない。
あらすじを書きたくなるのは、きみが感想文としてどう書けばいいのか分からないからだ。きみは本を読んで必ずなにかしら感想をいだいたはずだから、その気持ちを文章にする方法さえ分かれば、おのずとあらすじを書く必要はなくなるので安心しよう。それに、あらすじで半分うまってるような感想文はダサいぞ。

「感想」は「気持ち」で終わらない

きみが例えば「桃太郎」を読んだとしよう。
「鬼退治をした桃太郎は勇気があってえらいと思いました。ぼくも見習いたいです。」
気持ちだけを書いたら一行で終わってしまう。これは当然だ。
だから、感想と言っても、単純に気持ちだけを書いておしまい、ではいけない。そこから一歩踏み込んだ文章を書くのが「感想文」だ。たとえば、
「桃太郎が鬼退治をして金銀財宝を持ち帰り、おじいさんとおばあさんと幸せに暮らしたように、なかまと力を合わせて一つの目標を達成すれば、みんなを幸せにすることができるんだろうと思いました。」
といった感じだ。
どう思ったかだけではなく、そこからどんな教訓が得られたか、自分は似たような成功や失敗をしたか、誰かから似たような話を聞かなかったか、など、いろいろ自分の知識につなげよう。
本を読んだ時の気持ちだけを書いて原稿用紙5枚分なんてとても無理だから、こじつけでもいいから何か関係ありそうな話題を探すんだ。

ほめなくてもいい

さっき例題にえらんでおいてなんだけど、ぶっちゃけ桃太郎って物語はなんだかヘンじゃない?
桃太郎は桃から生まれるし、きびだんごで動物がなかまになるし(きみはきびだんごなんて食べたことある? 私はない)、鬼は鬼ヶ島にいるところを桃太郎におそわれるし、金銀財宝を持って帰るのはもはや強盗に近い。
本を読んでヘンだと思ったところがあったら、それを素直に書いたほうがいい。せっかくヘンだと感じたんだから、その感想を書かずに本をほめるだけで終わるのはもったいないだろう。
「桃太郎は鬼ヶ島に鬼退治に行きました。しかし、物語の中で鬼はわるいことをしていません。もしかしたら桃太郎は、鬼がおそろしい見た目というだけで悪人と決めつけておそいかかったのではないでしょうか。だとしたら、とてもひどいことだと思います。かつてアメリカでは、黒人が肌が黒いというだけの理由で差別され、どれいにされていました。鬼だって、もしかしたら人間からなかまはずれにされて鬼ヶ島でさびしく過ごしていたかもしれないのです。」
アメリカのくだりは言いすぎかもしれないけど、こうやって現実の話と混ぜると「するどい視点」っぽく書くことができるぞ。

実は感想文に限らず、なにごともほめるより、けなしたり指摘したりするほうが簡単なんだ。だから世の中にはものごとに文句ばかり付ける仕事の人がいっぱいいたりするんだけど、きみもそっちのほうが書きやすそうならそうするとよい。たとえば、本の主人公がおかしなことをしていたならそれを指摘し、こうしていればもっとよい結果になった、自分ならこうした、というふうに文章を組み立てていくと、話がよく広がる。先生は顔をしかめるかもしれないけどね。

何度も読む

感想というのは、案外自分でもどう感じていたのか分からなくなるときがある。だから、同じ本を何度も読もう。そうすると、早く読めたり、楽しく読めたりするページもあれば、つまらなかったり、飛ばしたくなったりするページもあることに気付くだろう。その気付きこそが、きみの感想になる。なぜ楽しく読めるのだろう? なぜつまらないのだろう? そう考えると、きみがその本を読んでどんな感想をいだいていたのか、自覚できるようになるのだ。

メモをとる

本を読んでいて、「なんだこのキャラクター、気に入らないな」とか、「この言葉はなんだかいいことを言っている気がするな」とか、「この文章はどういう意味なんだろう?」とか、「このギャグは笑えるな」とか、「なんでこの人はこんなことをしたんだろう?」とか、さまざまなことを思うだろう。その時はそう思っても、読み終わってしばらくしたら忘れてしまうこともある。だから、何か小さなことを感じたらすぐにメモしよう。きみはケータイやスマホを持っているかな? 持っているなら、メモ機能を使うと鉛筆より早く書けるかもしれない。オススメだ。
さらに、メモをすると、「物語の最初はイヤなヤツだと思ってたけど、終わってみたら実はイイヤツだと気付いた」とか、そういう自分自身の気持ちの変化にも気付くことができる。

書き出しの工夫なんていらない

読書感想文の書き方の本を読むと、よく「書き出しは本との出会いや自分の体験などから始めるなど、工夫して書こう」みたいに書かれていることがある。でも、はっきり言って、工夫なんて全然いらない! ふつうに「○○を読みました。」で始めていいよ!
気の利いた書き出しなんてやらなくたって中身がしっかりしていればそれでいいのだ。とにかく、手を付けやすい簡単な書き出しでいい。というか、書き出しでなやんじゃダメ! さっきも言ったけど、とにかく文章を書くのは勢いが一番大事だから、スタートダッシュはテキトーでいいからさっさと書き始めるんだ!

書き出しの工夫やまちがいの直しは、全部書き終わったあとで時間に余裕があればやるとよい。こういう「まず全体をおおまかに作り上げてから細かい部分を直す」やりかたをトップダウン設計という(おぼえなくていいよ)。

書き終わりの工夫もいらない

もちろん、書き終わりもテキトーでいい。何かを学びましたとか、これからの人生に活かそうと思いますとか、そんなきれいな感じで終わらせる必要はない。私なんて、高校の頃に書いた感想文では「私にはまだ理解できそうもない。」という一文でしめくくったこともあるぐらいだ。
本当に分からないこと、納得できないことが本の中にあったなら、「分かりませんでした。」で書き終わっても全然オッケーなのだ。だって、きみがそう思ったんだから。

思いついたことを思いついた順番に書く

書き出しと書き終わりは分かった。じゃあ、中身はどうやって書けばいいの? と思ったきみのギモンに答えよう。
さっきも言ったけど、とにかくガーッと書きまくって終わった後で直せば良いんだから、まずは思いついたことを思いついた順番に書いていけばいい。
話の順番がめちゃくちゃでも、筋が通っていなくてもいい。とにかく一気に書く。そうすると、「あれ、この段落とこの段落はつなげると言いたいことがはっきりするな」とか、逆に「この段落とこの段落を続けて書くと言いたいことがこんがらがってしまうな」などといったことに気付くので、後から直すことができる。



どうだろう。いろいろ書いてみたけど、参考になっただろうか。
8月もあと半分、まだ読書感想文に手を付けていない人がいたら、まずはぐちゃぐちゃでもいいから書き上げてみよう。そしたら、意外となんとかなるもんだよ。

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