TVアニメ版機動戦士ガンダム(1st)を全話見ました

前から見よう見ようと思いつつ先延ばしにしていたので、アマゾンプライムで見てきました。


流石に40年前のアニメだけあって最新の3DCGや演出効果を駆使したアニメとは比べるべくもない作画クオリティではあったし、SF観も80年代のピコピココンピュータって感じで古臭さは拭えないし(それはそれでレトロフューチャーって感じで悪くはないのだが)、4クールアニメ特有の中だるみみたいなものも見て取れたが、それでも見る価値のあるドラマのある作品だった。

全体として、とにかく話のテンポが良い。かなりサクサク進むし、基本的に戦闘開始から終了までが1話に収まっているのでストレスなく視聴できる。これに関しては富野氏のセンスのなせる技なのだろうか。こういうテンポの良いアニメはかなり好きなんだけどなかなか見つけられない。思いつくところではアニメではないが、シン・ゴジラが近いか。

序盤、民間人のアムロ少年が戦争に巻き込まれて新型兵器の操縦をすることになり、なし崩し的に軍に組み込まれていく、というのは割とテンプレな感じはするが、その後15歳のアムロが人を殺していくことの葛藤や疲弊、仲間との衝突といった描写が非常に丁寧で、ガンダムに乗るだの乗らないだの言ってる彼に不快感を覚えるどころか、逆に同情を禁じえなかった。等身大の少年兵としてあまりに説得力がある。

艦長のブライトでさえ19歳である。指揮が未熟だったりアムロと衝突してしまうのも、彼の年齢を思えば妥当どころかよく頑張っているとさえ思えた。有名な「親父にもぶたれたことないのに」のシーンは、すねたアムロが大人から鉄拳制裁を受けるのではなく、人を殺すことへの葛藤と疲労で動けないアムロと、まだ未成年で彼に対する対応も十分に分からないブライトとのぶつかりあいだと感じた。「貴様はいい。わめいていれば気分も晴れるんだからな」というブライトのセリフは、彼が艦長という重圧に耐えかねていることを示している。

このアニメの序盤のモチーフは言うまでもなく太平洋戦争だろう。ホワイトベースに避難民が乗り込み、食料問題や暴動が起こったりするのはかなりリアルだ。塩を取りに行く話で1話使うというのもなかなか凄い。個人的には、このあたりの戦争を描いた部分はかなり好きだ。戦争というのはスーパーロボットが一台あれば解決するものではないからね。

このアニメでは、敵とされるジオン公国は悪の軍団ではないし、ジオン兵は悪の手先ではない。敵にも事情がある、という言葉にすれば陳腐な事実を、ひとつひとつ丁寧に描写している。ジオン兵だって一人の人間であり、家族がいて、好き嫌いがあって、人の心があるということを執拗に強調しているため、単にドンパチやるのが爽快、というアニメではなかった。むしろアムロが撃破すればするほど「アムロは人殺しが上手くなっていってしまう」と悲しみを覚える。戦闘シーンそのものというよりは、その背景にある人間ドラマを楽しむのがこのアニメの楽しみ方だろう。

終盤、突然湧いて出たニュータイプという概念について。リュウの死あたりからアムロが急速に落ち着き、強くなっていった。覚醒したのは黒い三連星戦あたりだろうか。ニュータイプという構想そのものは初期からあったのだろうが、なにぶんワードが唐突に湧いて出たので、「エスパー的能力で物語の収拾を強引につけた」という印象も否めない。本来なら52話放送だったそうだから、もっと掘り下げる余地があったのだろう。アムロが異常に強くなっていく反面、「人はそんなに便利になったりしない」と言われたりもしていたし、「エスパー的能力」と「人と人がわかりあえる力」は切り離して考えるべきなのだろう。ララァとの交信はかなりオカルト味が強かったのであまり乗れなかった。というか、序盤かなりリアルに戦争モノをやっていたぶん、余計に「オカルトで収拾をつける」という展開に納得しきれない部分もあった。



そんなわけで、40年前ということで相当古いアニメではあるのだが、作画はともかく戦争描写やテンポの良さは現代のアニメと比べても遜色なく、時間を費やして視聴する価値は十分にあると感じた。次はZガンダムかな。その前に劇場版にしようか。

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